Scene 4-1　＜プロローグ＞

ここは外界と幻想郷の境に存在する博麗神社。

幻想郷の結界は、博麗神社の巫女が過去に張った物である。

現在もここに住む巫女は、この博麗大結界の守人としてこの幻想郷を守っている。

巫女の名は博麗霊夢。

妖怪退治を生業としているらしいが、そういった仕事をしているようには見えない。

一日中お茶を飲みながら、のんびりと神社を切り盛りしている。

切り盛りするといっても、賽銭を入れるような参拝客も普段居るわけでもない幻想郷。

特に神社の巫女らしいことをするわけでもなく、神社の掃除で一日の大半が終わってしまう。

いつものように、神社の境内には巫女の姿と、ここ最近神社に入り浸っている小鬼の姿。

伊吹萃香と言うこの小鬼、密と疎を操る力を持っている。

以前、この力で幻想郷にとある事件を起こしたが、この神社の巫女に退治されてしまった。

それ以来、萃香はここの住人であるかのように、日々の大半をこの神社で過ごしている。

そんな小鬼を特に気にもせず、巫女は今日も境内を掃除している。

今日は、薄く雲が掛かった曇り空･･････。

巫女のつぶやきからこの一幕は始まる。

Scene 4-2　＜博霊神社 境内＞

霊夢：「今日は曇り･･････。 曇っている日は、境内の掃除にはもってこいだけど、洗濯物が乾きにくいから困るのよね。

　それに曇っている時は、アレがくることが多いし･･････」

レミリア：「人をアレ呼ばわりとはずいぶんね、霊夢」

霊夢：「ほら来た。　今日はなぁに？　呑みたきゃその辺の縁側に転がってる『うわばみ』とでもどうぞ」

レミリア：「折角の吸血鬼の散歩日和だというのに、つれないわね霊夢。

　それに私は上物のワインしか飲まない。 エチルでもメチルでも良いような『うわばみ』と一緒にしないで欲しいわね」

霊夢：「エチルは良いけど、メチルは止めときなさいよ･･････」

萃香：「そうだぞー。 でもエチルだって口に含んだとたんに舌がピリピリして、 んでもって口の中がカラカラになって呑めたもんじゃないだぞ」

霊夢：「あら、萃香。　起きてたの？　掃除を手伝う気が無いなら、寝てなさい」

萃香：「だって、霊夢が遊んでくれないからさぁ〜。　呑むしか無いじゃんか〜」

レミリア：「すっかり子守りが板についているようね」

霊夢：「おかげさまで。 　それに、あんただって十分お子様でしょ。 　お子様同士、仲良く遊んでらっしゃいな」

レミリア：「私は呑む事しか頭に無い鬼と戯れるつもりは無い」

萃香：「んん〜？　いいぞ。　何時ぞやのケリをココで着けようか？　紅い館の吸血鬼？」

レミリア：「ケリ？　あの時にもうついてるでしょ？　それともまた泣いて逃げ出したいのかしら？」

萃香：「出鱈目言うな！　よぉし、そんなに言うなら泣かしてやる」

霊夢：「ハイハイ、そこまで。 　境内で暴れたら、ひとしきりしばいた後、二度とこの神社に入れないようにしてあげるけど、それでも続きをやりたい？」

萃香：「ううぅ、それは困る〜」

レミリア：「ふん、私も大人気なかったわ。　今回は引いてあげる」

霊夢：「ほんとにもう、二人ともそういう所がお子様なのよね。 　んで、レミリア。　今日は用事が有って来たんじゃないの？

　咲夜も連れずにうちに来るなんてあまり良い用事とは思えないけど」

レミリア：「咲夜には別件で使いに出させているのよ。 　用事というのはね･･･、そうね、霊夢。　貴方、何か楽器はできる？」

霊夢：「唐突ねぇ。 　神社の行事で使うから、笙（しょう）とか、篳篥（ひちりき）とか、竜笛（りゅうてき）とか、後は趣味で琴とか」

レミリア：「ふーん、じゃあ霊夢には、洋琴（ハープ）を弾いてもらうわ」

霊夢：「話が読めないんだけど･･････。 　それに私の弾ける楽器のラインナップから、どうやって洋琴に行き着くのか教えて欲しいわ」

レミリア：「貴方、琴が弾けるって、今言ったじゃない」

霊夢：「そこだけ？」

レミリア：「そうよ。　和琴と洋琴の違いでしょ。 そんなもの、木琴とか手風琴（アコーディオン）と比べたら微々たる物だわ」

霊夢：「あんたの区分は大雑把すぎるのよ」

レミリア：「別に良いじゃない。　霊夢だったらきっとできるでしょ。 　それに笛を吹ける人材は足りてるもの。

　あとこれが本題。 　紅魔館で演奏会をすることになったんだけど、人手不足だから霊夢も参加するの。

　はいこれ、曲目とメンバー表」

霊夢：「ふーん、面白そうね。　メンバーに強制的に入れられてるのは気に食わないけれどね」

萃香：「あたしもなんかやるー。　なぁ、いいだろー、レミリア」

レミリア：「貴方にはその力で当日のお客を集めてもらおうかと思ってたけど、そうね･･･、じゃあ笛でも吹いてもらおうかしら」

萃香：「おう、笛ならふけるぞー」

霊夢：「ちょっとレミリア。　貴方さっき笛は足りてるって言ってたじゃない」

レミリア：「知らないの霊夢？　 悪魔と鬼は笛を吹く物だって昔から決まってるものなのよ」

霊夢：「そうなの？」

レミリア：「あと猫は三味線を弾くわ」

霊夢：「いや、嫌うってのは聞いたことあるけれどね･･････」

萃香：「鬼は三味線は弾かないぞー」

霊夢：「いや、それ意味が違うから･･････」

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